「自分がムカつく」と素直に言えない人の心理。~名古屋心療内科コラム

人と意見が対立したとき、こんな言葉を耳にすることがあります。

「そんな考え方は社会的に許されない!」
「普通の人なら、そんなことは言わない!」
「みんなが迷惑しているんだ!」

もちろん、社会的なルールや周囲への配慮は大切です。

ただ、こうした言葉の裏には、実はもっと単純な感情が隠れていることがあります。

それは、「自分が腹を立てている」という気持ちです。

たとえば、誰かの発言にイライラしたとします。

そのとき、

「私はその言い方が嫌いです」

と言えば、あくまで自分自身の感情や意見になります。

ところが、

「そんな発言は社会的に許されない!」

と言えば、まるで社会全体を代表して相手を批判しているように聞こえます。

心理学には「合理化」という考え方があります。

これは、自分の行動や感情について、
もっともらしい理由をつけて説明しようとする心理的な働き
のことです。

たとえば、誰かに嫉妬しているときに、

「あの人は調子に乗っているから嫌いなんだ」

と考えることがあります。

もちろん、本当に相手の態度に問題がある場合もあります。

ただ、自分の中にある嫉妬や怒りを認めるより、
相手が悪いと考えたほうが気持ちを整理しやすいこともあるのです。

同じように、「私はムカついた」と言う代わりに、
「社会が許さない」と言ってしまう場合もあるのでしょう。

しかし、ここで注意したいことがあります。

「自分が嫌いなこと」と「社会的に間違っていること」は、必ずしも同じではありません。

自分にとって不快な発言でも、他の人は気にならないかもしれません。

反対に、自分は平気でも、誰かにとっては深刻な問題であることもあります。

だからこそ、意見を伝えるときには、
まず自分自身の気持ちを整理することが大切です。

「私はその言い方が苦手です」

「私はこういう理由で反対です」

「その発言を聞いて、悲しくなりました」

こんなふうに、自分を主語にして伝えてみる。

これなら、社会全体の意見を勝手に代弁することなく、自分の考えを相手に伝えられます。

もちろん、差別やハラスメントなど、個人の好き嫌いだけでは済まない問題もあります。
その場合は、具体的に何が問題なのかを説明することが必要です。

大切なのは、自分の感情と、客観的な問題を混同しないことです。

誰かに腹が立ったときほど、「これは本当に社会的な問題なのか、それとも自分が嫌だと感じているのか」と考えてみる。

「自分がムカつく」と素直に認めることは、決して恥ずかしいことではありません。

むしろ、自分の感情を自分のものとして受け止められる人のほうが、冷静に意見を伝えられるのかもしれません。

今回の話、何か少しでも参考になることがあれば幸いです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

(完)

名古屋
官越いやし|ゆうメンタルクリニック心療内科・精神科

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