無限スクロールに潜む「恐ろしい仕組み」の話。~名古屋心療内科コラム

◆ 「コカインを画面にばら撒いているようなもの」
無限スクロールを開発したエイザ・ラスキン氏は、
後に自分の発明をこう表現しました。
「これは、コカインを画面にばら撒いているようなものだ」
ショッキングな言葉ですが、これは誇張ではありません。
むしろ現在のSNS依存を見れば、“正確すぎる比喩”と言えます。
スクロールするたびに次から次へと情報が流れ込み、
途切れない刺激が脳を興奮させ続けるその仕組みはまさに
「報酬系」を刺激し続ける“デジタル麻薬”のような働きを持っているのです。
◆ 無限スクロールが生む「ドーパミンの洪水」
心理学と脳科学の視点から見ると、無限スクロールの恐ろしさはここにあります。
● 報酬予測のランダム性
人間の脳は、「次に何が来るかわからない」状態に強く反応します。
これを変動比率スケジュール(ランダム報酬の仕組み)といい、
スロットマシンと同じ構造です。
- 面白い投稿があるかもしれない
- 役立つ情報が出るかもしれない
- 誰かが“いいね”を押してくれたかもしれない
この「かもしれない」を追い続けることで、
脳はドーパミンを繰り返し放出し、
興奮しながらスクロールを止められなくなります。
これこそが、ラスキン氏が言った「コカインのようだ」の理由なのです。
◆ 「ちょっと遠ざかる」だけでも、心が取り戻せる
無限スクロールに疲れたら、
依存を断つ必要はありません。
極端な断食は逆にリバウンドを生むからです。
代わりに、以下を試してみてください。
● ① スクロール時間を“区切る”
タイマーを5分にして、その間だけ見る。
時間の枠があるだけで消耗はぐっと減ります。
● ② ホーム画面からSNSアプリを外す
開くまでのひと手間が「自動開封」を防ぎます。
● ③ SNSを見る目的を“ひとつだけ”決める
「友達の投稿だけ見る」
「通知だけ確認する」
など、無意識のスクロールを減らせます。
● ④ ベッドではスマホを触らない
睡眠の質を守るための最重要ポイントです。
「完全にやめる」必要はありません。
ただ、“自分の意志で使う時間”を少し増やすだけで、
脳は確実に回復し始めます。
◆ まとめ
エイザ・ラスキン氏が語った警告は、
私たちへのメッセージでもあります。
無限スクロールは“便利なツール”ですが、
同時に“脳を疲れさせる仕掛け”でもあります。
今日もどうか、あなたの大切な時間を守ってあげてください。
今回の話、何か少しでも参考になることがあれば幸いです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
(完)


















