マルチタスクの落とし穴という話。~名古屋診療内科コラム

◆ 同時進行は“効率がいい”ようで、実は一番ムダ
「あれもやらなきゃ」「こっちも進めなきゃ」「そういえばあのメール…」
そんなふうに同時にいくつものことを考えていると、
頭がどんどん重くなっていきませんか?
一見「マルチタスクができる人」は効率的に見えます。
でも実は、人間の脳は“同時処理”がとても苦手。
実際には複数の作業を「細かく切り替えて」行っているだけなんです。
心理学ではこの切り替えによるロスを「スイッチングコスト(切り替えコスト)」と呼びます。
このコストが積み重なると、集中力が分散し、思考のリズムが乱れ、
最終的に“どれも中途半端”になるんです。
◆ 「5分だけ集中」なら、脳は動く
だからこそ、いちばん効率がいいのは、
「今この5分はAだけやる」と決めること。
Aが終わったら、次の5分はBに集中。
Bが終わったら、その次はCへ。
こうして短い時間ごとに“ひとつのことだけ”に意識を絞ると、
驚くほどスッキリ作業が進みます。
これは脳科学でいう「シングルタスク効果」。
一つの対象に集中しているとき、脳の前頭前野が効率的に働き、
エネルギーの消費が最小化されることが分かっています。
逆に、注意があちこちに飛ぶと脳が再起動を繰り返すような状態になり、
疲れやすくなるのです。
◆ 「5分だけ」ならやる気も出る
「よし、Aを完璧に終わらせよう」と思うと、
やる前から気が重くなるものです。
でも「5分だけAをやる」と区切ると、ハードルがぐっと下がります。
これは心理学でいう“タイム・ボクシング効果”。
人は「制限された時間」に対して、集中力を自動的に高める性質があるのです。
5分でいい。短くてもいい。
大切なのは、「今はこれだけ」という明確なフォーカスです。
◆ 小さな区切りが、大きな達成感になる
不思議なもので、5分集中して終わると、
「次も少しやってみようかな」と自然にモチベーションが続きます。
これが積み重なっていくと、
気づけばたくさんの仕事や勉強が終わっている。
「全部を一気にやろう」とするより、
「今この5分に全力を出す」方が、ずっと速く、ずっと楽です。
◆ まとめ:「5分の区切り」で世界が変わる
頭が混乱したときは、こうつぶやいてみてください。
「とりあえずこの5分はAだけやるぞ。その次はBだ。」
その“5分”が、あなたの集中力を取り戻すリセットボタンになります。
小さな区切りが、心を整え、
気づけば一日を驚くほど軽くしてくれるはずです。
今回の話、何か少しでも参考になることがあれば幸いです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
(完)















