苦しいことがあったときの考え方 ~名古屋心療内科コラム

◆ 「なぜ自分だけが」と思うとき
人生には、どうしても避けられない苦しみがあります。
理不尽な出来事、失敗、喪失、人間関係の痛み……。
そんなとき、多くの人は「なぜ自分だけが」と思ってしまいます。
けれど、その考えのままでは、心はどんどん疲弊してしまう。
自分を責めても、誰かを責めても、苦しみが軽くなることはありません。
でも、視点をほんの少し変えるだけで、同じ痛みが少しやわらぐことがあります。
◆ 「あの人じゃなくてよかった」という祈り方
たとえば、苦しい出来事に直面したとき、
大好きな人の顔を思い浮かべてみてください。
家族でも、友人でも、恋人でも、恩師でもいい。
そして心の中で、こうつぶやくのです。
「この苦しみが、あの人にではなく自分に降りかかってくれてよかった。」
そう思えた瞬間、痛みの意味が変わります。
それは“自分だけが不幸”という思考から、“誰かを守れた”という穏やかな誇りへと変わるからです。
苦しみを完全に消すことはできなくても、「誰かの代わりに受け取れた」と考えるだけで、心の中に温かい強さが芽生えます。
◆ 利他的な視点が心を癒す
心理学の研究でも、「利他的感情」がストレスを軽減することがわかっています。
他人の幸せを思うことは、自分の神経系を落ち着かせ、感情を安定させる効果を持つのです。
つまり、“思いやり”は自分の心を癒やす力でもあります。
仏教の「慈悲」や、心理学で言う「自己超越」も同じ考え方です。
自分の枠を超えて他者を思うとき、人は痛みの中にも意味を見出すことができるのです。
◆ まとめ:優しさで痛みを包もう
苦しいときこそ、誰かを思い出してみましょう。
「この痛みが、あの人ではなく自分に来てくれてよかった。」
そう祈るように思えるだけで、心の底に静かな灯りがともります。
痛みはあなたを壊すためにあるのではなく、
あなたの中に眠る優しさを目覚めさせるためにあるのかもしれません。
今回の話、何か少しでも参考になることがあれば幸いです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
(完)















