誘惑にたいして心を強くする方法~名古屋心療内科コラム

◆ 誘惑は、いつも突然やってくる
「ちょっとだけスマホ見よう」
「今日くらいお菓子食べてもいいよね」
「もうやる気出ない、寝ようかな」
そんな小さな誘惑は、いつも突然やってきます。
しかも厄介なのは、その瞬間の“勢い”です。
衝動というのは、まるで波のように押し寄せ、
気づいたときには流されてしまっている。
でも、もしその波の前に「小さなお堀」があったらどうでしょう?
すぐには入ってこられないから、心に余裕が生まれます。
◆ 「1分待つ」というお堀の力
たとえば、「スマホを見たい」「お菓子を食べたい」と思った瞬間に、
“すぐ実行”せずに、たった1分だけ待つ。
それが、あなたの心を守る“お堀”になります。
心理学でも、このように「刺激と行動の間に“間”を作る」ことを
スティミュラス・ギャップ と呼びます。
この“わずかな時間差”が、衝動を冷ます強力なクッションになるのです。
1分経つころには、「まあ今じゃなくてもいいか」と思えることが多い。
逆に、それでも「どうしてもやりたい」と感じるなら、
それは“本当にやりたいこと”かもしれません。
◆ 「我慢」ではなく「観察」する時間
大切なのは、1分を“我慢の時間”にしないこと。
「我慢」ではなく「観察」の時間にするのです。
その1分間、自分にこう問いかけてみてください。
- 今、私は何を求めているんだろう?
- 本当に欲しいのは“スマホ”なのか、“休息”なのか?
- これをやったあと、気持ちはどうなりそう?
この問いを立てるだけで、衝動は“意識の光”の中に置かれ、
勢いを失っていきます。
◆ ネガティブな感情にも、お堀を
この方法は、怒りや不安、落ち込みにも応用できます。
たとえば「もうムカつく!」「やってられない!」と思ったとき、
すぐに反応せず、1分だけ呼吸を置く。
その“間”が、感情の洪水を止めるお堀になります。
怒りや不安の波は、3〜5分でピークを過ぎることが多いといわれています。
つまり、最初の1分をやり過ごせれば、
多くの感情的な失敗を防げるということです。
◆ まとめ:お堀のある心は、強くてやさしい
衝動のまま動くと、あとで後悔することが増えます。
けれど、1分の“お堀”を持つだけで、
心はずっと静かで、選択が丁寧になります。
誘惑もネガティブも、完全にはなくならない。
でも、それがやってきたときに、
「よし、1分だけ泳がせよう」と思えるあなたは、
もう心の城を守る立派な城主です。
今回の話、何か少しでも参考になることがあれば幸いです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
(完)















