何度も繰り返せ!~名古屋心療内科コラム

◆ 同じCMが心に残る理由
テレビを見ていて、同じCMを何度も目にするうちに、
「なんかこの商品、気になるな」「一度買ってみようかな」
そんなふうに思ったことはありませんか?
それは広告戦略の巧みさだけではなく、私たちの脳の自然な仕組みによるものです。
心理学ではこれを 「単純接触の原理」 と呼びます。
アメリカの心理学者ロバート・ザイアンスが提唱したもので、
「人は、繰り返し接触する対象に好感を持つようになる」という法則です。
つまり、“何度も出会う”こと自体が、好きになる理由になるのです。
◆ 言葉にも「接触効果」がある
この原理は、商品だけでなく人間関係にも強く働きます。
一度だけの「ありがとう」よりも、何度も伝えられた「ありがとう」の方が心に残る。
一度だけの「好き」よりも、会うたびに伝えられる「好き」の方が信頼につながる。
言葉も、接触の一つです。
繰り返し伝えることで、相手の心の中に温かい印象が積み重なっていきます。
たとえ同じ言葉でも、時間をおいて何度も聞くうちに、
「この人は本当にそう思ってくれているんだな」と感じられるようになるのです。
◆ ほめ言葉や好意は“繰り返し”が力になる
私たちはつい、「もう言ったし、しつこいと思われるかも」と考えてしまいます。
けれど本当に大切な人に対しては、繰り返すことこそが大事。
言葉の力は一度きりでは届きません。
水が石を削るように、何度も届くことで心の形を変えていきます。
たとえば、次のような小さな習慣を意識してみてください。
- 会うたびに「ありがとう」を一言添える
- 小さなことでも「すごいね」とほめる
- 離れている人にも、たまにメッセージで「元気?」と声をかける
- 家族や恋人に、理由がなくても「好きだよ」と伝える
たったそれだけで、人との関係は確実に変わっていきます。
◆ 自分にも“好意の接触”を
単純接触の原理は、他人に対してだけでなく「自分自身」にも働きます。
「自分はダメだ」と繰り返す人は、どんどん自信を失う。
反対に、「大丈夫」「よくやってる」と何度も自分に声をかける人は、
少しずつ自己肯定感が育っていきます。
だからこそ、自分への言葉も“繰り返す”ことが大切なのです。
◆ まとめ:伝え続ける人になる
一度だけの言葉は、風のように通り過ぎていきます。
けれど、何度も繰り返し伝えられた言葉は、心に根を張ります。
単純接触の原理は、人を操るテクニックではなく、
「丁寧に繰り返すことの力」を教えてくれる法則です。
だから、遠慮せずに何度でも伝えましょう。
「ありがとう」「うれしい」「好きだよ」
その言葉を繰り返すたびに、きっと誰かの心が温まっていきます。
今回の話、何か少しでも参考になることがあれば幸いです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
(完)