「他人の気持ち」を重視しすぎるな、という話~名古屋心療内科コラム

目次
◆ 優しすぎる人が抱える落とし穴
「相手を思いやることは大切」──これは誰もが知っていることです。
しかし、自分の気持ちを押し殺してまで他人を優先し続けると、心は少しずつ疲弊していきます。
実際、カナダ・ウィンザー大学のケネス・クラマー博士の調査では、
👉 「自分の気持ちより他人の気持ちを重視する人は、うつ病を発症しやすい」
という結果が示されました。
つまり「優しさ」や「気遣い」も、度が過ぎれば自分を傷つけるリスクになるのです。
◆ 心理学的背景:「自己犠牲型」のリスク
心理学では、他者の気持ちを過剰に優先する傾向を 自己犠牲型行動 と呼びます。
一見美徳のように思えますが、研究によれば自己犠牲型の人は、
- 慢性的なストレス
- 自己効力感(自分には価値があるという感覚)の低下
を抱えやすく、うつ症状や不安障害に結びつくことが多いのです。
また「他人の期待を満たすことが自分の価値」と思い込むと、自己肯定感が他人次第になり、精神的に不安定になります。
◆ 介護職や看護職に多い傾向
実際に、介護職や看護職など「他人のために尽くす仕事」をしている人は、燃え尽き症候群(バーンアウト)のリスクが高いことが多くの調査で示されています。
その原因のひとつが「他人優先の姿勢」。
他者への献身が続くほど、自分の感情や欲求を抑え込み、心が疲れ果ててしまうのです。
◆ 自分の気持ちも大切にする習慣
よって以下の方法を試してみましょう。
- 「自分の気持ち」を口に出す
「私はこう思う」「こうしてほしい」と伝えるだけでも、心理的なストレスは大きく減ります。 - NOと言う練習をする
全てのお願いを聞く必要はありません。小さな「NO」から始めることで、自分を守る力が強まります。 - セルフケアの時間を確保する
人に与えるだけでなく、自分をいたわる習慣(趣味・休養・好きなこと)を「予定」として入れておきましょう。
◆ まとめ:優しさと同じくらい「自分」を大切に
- ウィンザー大学の研究で「他人優先の人ほどうつになりやすい」と判明
- 自己犠牲は一時的には評価されても、長期的には心を蝕む
- 「自分の気持ちを口に出す」ことは、決してわがままではなく心の健康維持に必要な行動
👉 誰かを大切にするのと同じくらい、自分の気持ちも大切にしましょう。
それが本当の意味で「優しい人」でいられる秘訣です。
今回の話、何か少しでも参考になることがあれば幸いです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。