SNSは時に「自傷行為」という話~名古屋心療内科コラム

◆ 苦しみの大半は「比較」から生まれ
人間の心を最も消耗させるものの一つが「比較」です。
- 「あの人はあんなに成功しているのに、私は…」
- 「同い年の友人が結婚したのに、自分はまだ…」
こうした思考は一瞬で自己肯定感を奪い、心を苦しくさせます。
心理学者レオン・フェスティンガーが提唱した 社会的比較理論 では、人間は自分を評価するときに、必ず他人と比べてしまうことが明らかにされています。
つまり「比較すること」自体は人間の自然な性質なのです。
しかし、それが行きすぎると自分を傷つける「毒」に変わってしまいます。
◆ SNSは「比較中毒」を加速させる
落ち込んでいるときにSNSを見るのは、まさに自傷行為に近い行動です。
心理学の研究でも、SNS利用と抑うつ症状には強い相関があることが繰り返し報告されています。
たとえばペンシルベニア大学の実験では、1日30分以内にSNS利用を制限した学生は、比較のストレスが減り、幸福度が有意に上がったことが確認されました。
つまり「他人のキラキラした姿」を見続けるほど、自分の現実とのギャップが拡大し、心を痛めてしまうのです。
よってもしあなたがSNSを見すぎてしまって落ち込んでしまうときは、以下を心がけましょう。
◆ 「比較の罠」を抜け出す方法
1. SNS断食を試す
一時的にSNSアプリを消す、使用時間を制限するだけで、気分が大きく改善します。
2. 比べる対象を「昨日の自分」に変える
心理学研究でも「自己比較(temporal comparison)」は、他人比較よりもポジティブな影響を与えるとされています。
「昨日より1ページ本を読んだ」「先週より少し早く起きられた」──そんな小さな進歩を可視化すると、自己効力感が高まります。
3. 「感謝日記」をつける
エモンズらの研究(2003)では、感謝できることを日々書き出すと幸福度が上がり、うつ症状が減少することが確認されています。
比較の矢印を「他人」から「自分の恵まれている部分」に切り替える効果があります。
◆ まとめ:SNS比較は現代の「心の毒」
- 人間は本能的に比較する生き物(社会的比較理論)
- SNSは比較を増幅させ、落ち込んでいるときに見るのは自傷行為に等しい
- 対策は「SNS断食」「昨日の自分との比較」「感謝の習慣」
👉 苦しいときこそ、スマホを閉じて深呼吸を。
そして他人ではなく「自分の一歩」を見つめることが、心を守る最もシンプルで確実な方法です。
今回の話、何か少しでも参考になることがあれば幸いです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
(完)