実は「集中しなくてもいい!」という話~名古屋心療内科コラム

◆ 神経科学が示す「ぼんやりの力」
かつては「記憶や学習には完全な集中が必要」と考えられてきました。
しかし近年の研究は、それに疑問を投げかけています。
アメリカの心理学者、ムノズとマイヤーらの研究グループが、マウスに目的や報酬のない自由探索をさせたところ、視覚野に神経適応が起きている兆候 を確認しました。
つまり、強い集中や訓練がなくても、脳は受動的に学び、適応することができるのです。
また、ハンガリーの心理学者、ホルバースらの調査では、
軽い課題中に注意力が低下していても、初期学習の効果は十分に現れた ことが示されました。
脳スキャンでは、覚醒中でありながら軽い睡眠に似た活動パターンが観察され、脳が「ぼんやりした状態」でも情報を整理し、蓄積している可能性が示唆されています。
これを心理学では「ウェイクフル・レスト」と言います。
よく人は
「集中しないとダメだ!」
「もっと全力で集中しなさい!」
「どうやって集中力をつけるか…!?」
なんて風に思っています。
もちろん集中力は、ないよりはあるに越したことはありません。
しかし、「集中力」という言葉にこだわりすぎ、集中しないと意味がない、まで思い込んでしまうと危険。
「集中しなきゃやってもしょうがない」
なんて思ってしまって、取り掛かれなくなってしまうリスクもあるのです。
今回の実験で示されるのは
「集中してなかったとしても、机に向かっているかぎり、何かに向かっているかぎり、それなりには学習できたり、作業としては進んでいく」
ということ。
であれば、大切なのは「集中力を完璧に保つこと」ではなく、ただ机に向かうこと。
それだけで脳は少しずつ学習を積み重ね、未来のあなたを助けてくれます。
「集中できないから意味がない」と悩む必要はありません。
まずは机に座る。それこそが成功への最初の一歩なのです。
今回の話、何か少しでも参考になることがあれば幸いです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
(完)