「死体の掘り返し」をすると関係が壊れる、という話~名古屋心療内科コラム

「死体の掘り返し」。
非常に不吉な言葉ですが、オーストラリアで心理学を研究しているラス・ハリスによると、この死体の掘り返しは「カップルが絶対にやってはいけないことで、永続的に関係を壊してしまう行為」なのだそうです。
意味はシンプルで、
「過去にあった相手の行為を、何度となく掘り返して、相手を批判すること」
です。
まさに一度死んで墓地に埋葬された死体を、何度も何度も掘り起こして攻撃することから、このように表現しているわけです。
もちろん、思い出してしまう気持ちは分かります。
しかし言われた相手にしてみれば、何度も何度も言われても同じような反応しかできません。
さらに過去の行為ゆえに、話をそれ以上広げることもできず、
「あ、あぁ…。あのときは確かに悪かったけど…」
くらいしか言うことができなくなります。
もちろん掘り返した方は、それを重々承知で、有無を言わせず相手を攻撃できるからこそ、その死体を掘り返しているのかもしれません。
しかし相手にはストレスがたまる一方で、長期的に関係をもっとも壊してしまう、というわけです。
よって死体を掘り返したくなっても、いったんはガマン。
それよりは「未来に向けて、もっとこうしてほしい」という希望を、具体的な形で伝えてみましょう。
たとえば
「前に連絡しなかったときがあってずっとさびしかった」
のなら、
「今度はちゃんと前もって連絡してくれると嬉しい」
「夜には必ず現況を伝えてくれると助かる」
など、明確に行動を伝えていくこと。
こうすると相手も直しやすくなり、関係が一番良くなります。
またこれ、「自分自身」についても同じ。
自分の過去の死体を自ら掘り返して、何度となく自分を攻めてしまうのも、決して良いことではありません。
「あれ? これ死体また掘り返してない?」
そんなふうに気づいたら、いったん深呼吸。
そしてムダに墓を暴くのをやめて、一度落ち着いてみましょう。
それこそが自分の精神を何より健康にするのです。
ぜひぜひ覚えておいていただければ幸いです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
(完)