DV被害者は「そのうち暴力的でなくなる」と思っている。~名古屋心療内科コラム

ハーバード・メディカル・スクールの心理学者ロバート・アプスラーは、DVの被害女性95人を対象にして、

「DVをする相手についてどう思うか?」

と聞きました。

するとそのうち46%の女性は

「そのうち暴力的でなくなる」

と思っている、ということが判明したのです。

これ、結構、深い真実を物語っていると思うのですが、いかがでしょうか。

そもそもDVをする人って、将来的に変わるか、というと…。
残念ながら、ほぼ変わらないのではないか、と考えます。

もちろん、老いてエネルギーが減るとか、病気になるとか、または性格を変えるほどのできごとがあるとか…。

そういう可能性がゼロとは言いません。

しかしそれであっても、変わる率って、10%もないと思うのです。

ただその女性は、46%が「暴力的でなくなる」と思っているというこの結果。

すなわち大半の人は、その希望だけを抱きながら今を耐えようと思い、相手はDVをし続けるにもかかわらず、一生にわたってその相手から離れられない…という構造を表しているわけです。切ない。

「いつかこの牢屋から出られると思う」と考えながら、一生出られない牢屋で生き続けている、というのと大差がないかもしれません。

もし「未来が見えるテレビ」があったとして、それをその「暴力的でなくなる」と思ってる女性たち全員に見せて、「ほら、未来にも暴力的ですよ」と分からせたら、もしかして今、別れようと動けるのかもしれません。
ただもちろんそれはできないので、難しいところなんですけども。

ただこれ、DV被害者に限らず、我々の多くが思い当たることではないでしょうか。

今の仕事や生活に何らかの不満を抱きつつ、「でも未来になったら、これは変わるかもしれない」と漠然と考えて、結果的に今の生活を変わらず続けている。

そんな人はとても多いと思います。

いえ、それがダメとは言いません。ムリして変えなくてはいけないこともないでしょう。

ただもし「その希望が一生にわたって叶わない」としたらどうでしょうか。
「であれば、今こう動くしかない!」と思って、何かをする原動力になるかもしれません。

少し大変なことかもしれませんが、「未来にこのまま変わらない、またはより悪くなることもありえる」という想像をしてみて、その場合今どうするか、というのを考えてみることは、今の生活においてとても大切なことではないかと考えます。

そして少しでも「変えたい」と思うのなら、一歩でいいので、何か行動してみましょう。

パートナーの問題なら、相手に「私はあなたのその行動を変えてほしい」と話してみるとか、別の相手との関係も見つけてみるとか。
仕事なら、転職や副業について調べてみるとか、または自分のノウハウを売る方法などを考えてみるとか。

ちょっとした一歩でも、将来が大きく変わる可能性はあるのです。

ぜひぜひ覚えておいていただければ幸いです。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

(完)