狭い世界にいると苦しむよ、という話~名古屋心療内科コラム

目次
◆ インドの寓話:塩のコップと湖
インドにこんな寓話があります。
ある師が弟子に塩をひとつかみ渡し、言いました。
「これをコップいっぱいの水に入れて飲んでみなさい」
弟子は飲んでみて、あまりのしょっぱさに顔をしかめました。
次に師は言いました。
「では同じ塩を湖に投げ入れ、その水を飲んでみなさい」
弟子は湖の水をすくって飲みました。驚くほどおいしく、塩の味は気になりませんでした。
師はこう説きます。
「苦しみは塩のようなものだ。同じ量でも、器の大きさによって受け止め方は変わる」
◆ 狭い世界にいるとストレスは強くなる
この寓話は「ストレスにたいする反応性」を表しています。
同じ出来事でも、自分の世界が狭いほど苦しみは強烈に感じられる のです。
- 仕事しかない人は、失敗一つで人生が崩れたように思える
- 恋愛しかない人は、別れ一つで世界が真っ暗に見える
- 学校しかない人は、いじめや成績不振が人生すべてに思えてしまう
「器がコップ」状態だと、苦しみは濃縮され、耐えられなくなるのです。
◆ 心理学的実例:「認知的柔軟性」
心理学では、ストレスをやわらげる力を 「認知的柔軟性」 と呼びます。
これは「視点を切り替える力」のことです。
研究によると、認知的柔軟性が高い人は、困難に直面しても「他の側面」に目を向けられるため、ストレスが長引きにくいことが分かっています。
逆に、柔軟性が低いと「これしかない」と思い込み、コップの水のように苦しみが濃縮されてしまうのです。
◆ 実践法:湖のように器を広げる3ステップ
ではどうすれば「湖の器」を持てるのでしょうか?
- 複数の居場所を持つ
仕事だけでなく、趣味やコミュニティを持つことで「逃げ道」をつくれます。 - 小さな挑戦を増やす
新しい体験は「視野の広さ」を育て、世界を大きく感じさせます。 - 感情を分散させる習慣
日記や運動、友人との会話で、苦しみを一箇所にため込まないようにしましょう。
◆ まとめ:「塩は減らせなくても、水を増やせる」
人生から、塩という苦しみを完全になくすことはできません。
でも、自分の器を広げることで苦しみの濃度を薄めることはできる のです。
- 趣味を持つ
- 新しい世界に飛び込む
- 視野を広げる
これらはすべて、湖を大きくする行為です。
器が広がれば、同じ苦しみでも軽く受け止められるようになります。
今日からあなたも、自分の世界を少しずつ広げてみましょう。
コップを湖に変えることが、ストレスに押しつぶされない最強の方法なんですよ。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
(完)