とにかく書き始めることが大切という話~名古屋心療内科コラム

書き始めた瞬間、すべてが動き出す
ある小説家が、新作を三年間も温めていました。
構想は頭の中にあるはずなのに、白い原稿用紙を前にすると手が止まり、日だけが過ぎていく…。
アイデアは熟成していくどころか、次第に「書けない自分」を責める気持ちだけが強くなっていきました。
そんなある日、友人が彼にこう言います。
「とにかく、何でもいいから書け」
「え、でも…」
「いいから書け」
その言葉に、小説家が半信半疑でペンを走らせると、最初に出てきたのは散文のような駄文ばかり。
意味も統一感もなく、自分でも笑ってしまうような文章です。
しかし、不思議なことに、書くことを続けているうちに、文章は少しずつ形を帯び始めました。
断片的な場面が連なり、登場人物が動き出し、物語の筋が見えてくる。そして気がつけば、彼は三年間も踏み出せなかった新しい小説を書き上げていたのです。
このエピソード、非常に学びがあると思うのですが、いかがでしょうか。
僕たちは「完璧な構想」や「十分な準備」が整ってから動こうとしがちです。
しかし、その準備が終わる日は永遠に来ないかもしれません。
頭の中で考えるだけでは、現実は1ミリも前に進まないのです。
行動には「慣性」があります。動き出せば、次の一歩が自然に生まれます。
最初の一行が二行になり、二行が三行になるうちに、思わぬ方向に展開が広がっていきます。
逆に、止まっている状態には“停止の慣性”が働き、何もしない日々が続きます。
だからこそ、質よりも量、正しさよりも動き出すことが重要です。
最初の一歩は、どんなに小さくても構いません。むしろ、小さいほど始めやすく、続けやすいのです。
この小説家のように、最初は駄作でも大丈夫。
意味のない行動の中にこそ、後から振り返って「始まり」と呼べる瞬間があります。
机の前に座る、ペンを持つ、最初の文字を書く…。
そんな単純な行動が、三年間の停滞を打ち破る鍵になったのです。
結局のところ、僕たちが夢を実現できるかどうかは、能力や環境よりも、「最初の一歩を踏み出せるかどうか」にかかっています。
ですのであなたもぜひ、まずは「一歩」を踏み出しましょう。
とにかく「何でもいいから書く」。
「こんにちは」でも「僕は」でもいいから書きましょう。
そこから、その先が始まっていくのです。
今回の話、何か少しでも参考になることがあれば幸いです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
(完)