怒りを発散するな、という話。~名古屋心療内科コラム

イライラしたとき、思い切り叫んだり、物を叩いたりすると、なんとなくスッキリする気がしますよね。

しかし、実はこうした「怒りの発散」は、かえって怒りを強めてしまうことがあります。

心理学には、怒りなどの感情を外に吐き出すことで気持ちが落ち着くという「カタルシス仮説」があります。

ところが、心理学の研究では、怒りを攻撃的な行動によって発散しても、
必ずしも気持ちが落ち着くわけではないことが示されています。

なぜ、こんなことが起こるのでしょうか。

たとえば、誰かにイヤなことを言われたとします。

そのあとも、

「あの言い方はひどい!」
「なんであんなことを言われなきゃいけないんだ!」

と、何度も思い返していると、最初よりも腹が立ってくることがあります。

心理学では、こうしてイヤな出来事や感情について繰り返し考え続けることを「反すう」と呼びます。

怒りを感じながらサンドバッグを叩くような行動は、この反すうを強めてしまう場合があるのです。

これはSNSでも同じです。

腹が立つ投稿を見つけて、批判を書き込む。
すると、反論が返ってきて、さらに腹が立つ。

気づけば何時間も相手のことを考え続け、最初よりもずっとイライラしている。

これでは、ストレスを解消するつもりが、自分でストレスを増やしているようなものです。

では、怒りを感じたときはどうすればいいのでしょうか。

おすすめなのが、ゆっくりと深呼吸をすることです。

怒っているときは、心拍数が上がったり、呼吸が速くなったりして、身体も興奮した状態になりやすいものです。

そこで、ゆっくり息を吸い、少し長めに吐くことを繰り返してみましょう。

こうした呼吸は、身体の興奮を和らげ、気持ちを落ち着かせる助けになります。
また、怒りの原因から少し距離を置くことも有効です。

すぐに言い返したくなっても、いったん席を外したり、SNSを閉じたりしてみる。

それだけでも、感情に任せた行動を防ぎやすくなります。
もちろん、怒ること自体が悪いわけではありません。

理不尽なことをされたときには、きちんと自分の気持ちを伝えることも大切です。

ただし、「怒りをぶつけること」と「問題を解決すること」は別です。

怒りに任せて相手を攻撃するよりも、まずは落ち着いて、何を伝えるべきかを考える。

そのほうが、結果的に自分のためにもなるはずです。

イライラしたときほど、何かを叩いたり、誰かを批判したりする前に、まずはひと呼吸。

怒りを無理に発散しようとするよりも、静かに鎮めることを意識してみてください。

今回の話、何か少しでも参考になることがあれば幸いです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

(完)