勘違いしたまま本番を迎えた水泳選手。~名古屋心療内科マンガ

◆ ADHDタイプに多い「勘違い」を防ぐ、心理学的なコミュニケーション術

仕事や日常会話で、「言った・言わない」のトラブルになる。 指示を正しく理解したつもりなのに、結果がズレてしまう。
ADHD(注意欠如・多動症)の傾向がある方にとって、こうした「勘違い」は大きな悩みの一つです。

これは決して「やる気」の問題ではありません。 脳の情報処理スタイルの違いによるものです。

今回は、勘違いが発生するメカニズムと、それを防ぐ具体的な対策について解説します。

◆ なぜ「勘違い」が起きるのか

心理学的に見ると、主な要因は「ワーキングメモリ(脳の作業机)」の特性にあります。

ADHDタイプは、一時的に情報を記憶しておくワーキングメモリの容量が少ない、あるいは不安定になりがちです。

そのため、長い話を聞いている最中に、最初のほうの内容が抜け落ちてしまうことがあります。

また、脳の特性である「衝動性」も関係します。 相手の話が終わる前に、「あ、こういうことか!」と結論を予測してしまいがちです。

その予測が当たっていれば良いのですが、外れていた場合、相手の言葉ではなく、自分の脳内で作り出した「予測」を「事実」として記憶してしまいます。

これが、勘違いの正体です。
ではいったいどうしたらいいのでしょうか?

◆ 対策1:オウム返し(復唱)の徹底

最も効果的で、すぐにできる対策は「復唱」です。 心理学では「バックトラッキング」とも呼ばれる手法です。

相手から指示を受けたら、自分の言葉に変換せず、そのまま繰り返します。

上司:「この資料、明日の15時までに3部コピーしておいて」
自分:「明日の15時までに、3部コピーですね」

声に出すことで、聴覚情報として脳に再入力され、記憶の定着率が上がります。 また、もし聞き間違いがあれば、その場で相手が訂正してくれます。

◆ 対策2:自分の言葉で要約して確認する

少し複雑な話の場合は、「要約」を使います。

「つまり、〇〇という理解で合っていますか?」 「今の話をまとめると、優先順位はAよりBが高いということですね?」

このように質問形式で確認を挟みます。 これは、自分の脳内の「予測」と、相手の「意図」とのズレを修正する「キャリブレーション(調整)」という作業です。

「理解できているはず」という過信を捨て、「ズレているかもしれない」という前提で確認を入れることが重要です。

◆ 対策3:メモは「外付けハードディスク」

ワーキングメモリの弱さをカバーするには、記憶を脳の外に出すしかありません。

「後で書こう」は禁物です。 ADHDタイプにとって、数秒後の未来は、現在の記憶が消えている別世界です。

話を聞きながら、キーワードだけでも書き留める。 スマホのボイスメモや、写真撮影を活用する。

自分の脳を信用せず、記録媒体(外付けハードディスク)に頼ることを徹底してください。

◆ まとめ

勘違いは、能力の低さではありません。 情報の入力と保存のプロセスに、少し工夫が必要なだけです。

・その場で復唱する ・要約して確認をとる ・即座にメモに残す

この3つのプロセスを機械的に組み込むだけで、ミスは劇的に減ります。 コミュニケーションのコストを下げ、本来のパフォーマンスを発揮するための技術として、ぜひ取り入れてみてください。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

(完)

そしてオマケ画像です。

この水泳選手が脱いでいる姿です!

………。

チョウチョですもの! こう脱ぎますよ! いや脱皮ですよ!

なんだかんだ、ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

(完)

名古屋
官越いやし|ゆうメンタルクリニック心療内科・精神科

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