背水の陣から学ぶ“追い込まれる力”~名古屋心療内科マンガ






◆ 背水の陣とは?
中国の将軍・韓信がとった有名な戦法に「背水の陣(はいすいのじん)」があります。
その名の通り、兵士たちを川を背にした場所に配置し、逃げ場をなくした状態で戦わせる布陣です。
普通に考えれば「押し込まれたら川に落ちて全滅するじゃないか」と思いますよね。
実際、これは非常に危険な作戦です。
けれど韓信は、あえて退路を断つことで兵士に「戦うしかない」という覚悟を生ませました。
その結果、わずか2万の兵で20万の大軍を打ち破った――という伝説的な勝利につながったのです。
◆ 人は追い込まれると力を発揮する
この「背水の陣」、日常生活にも当てはまることがあります。
私たちも普段は「まあ、明日でいいか」と思って先延ばしにしてしまいがちです。
ところが締め切りが迫ったり、「落ちたら恥ずかしい」と思う試験を受けたりすると、
普段以上の集中力が発揮できることがあります。
漫画の中でも、「周囲に宣言してしまう」「試験を申し込んでしまう」など、
自分で退路を少しずつふさいで“やらざるを得ない状況”をつくる方法が紹介されていました。
背水の陣のように極端ではなくても、適度に自分を追い込むことで本気の力が出るのです。
◆ 背水の陣の工夫と現代の工夫
韓信はただ川を背にしただけではありません。
すでに別の部隊を城へ送り込み、敵が疲れて退却するころに奪取できるよう準備をしていました。
つまり「ただ無謀に退路を断つ」のではなく、
追い込みと同時に勝つための道筋を用意していたのです。
私たちも同じで、ただ「退路を断つ」だけではストレスに押しつぶされてしまうこともあります。
「背水の陣」のエッセンスを生活に応用するならば、
たとえば、まずは締め切りを作ってみることです。
試験日を申し込んでしまえば、そこに向けて努力せざるを得ません。
さらに周囲に「やる」と宣言することで、後に引けなくなります。
こうして少しずつ退路を断つ一方で、大切なのは同時に“小さな達成感を積み重ねる工夫”をしておくことです。
無理のない範囲で「今日はここまでできた」と感じられる仕組みを作れば、追い込むことと前に進むことの両方を両立できます。
「退路を断つ+勝ち筋を作る」の両輪が大切なのです。
◆ 適度な“背水”でいい
背水の陣は兵士に「負ければ死」という極限状態を与えました。
しかし日常でそこまでやる必要はありません。
むしろ過剰に追い込むと不安や緊張が強くなり、逆に力が出せなくなることもあります。
心理学のヤーキーズ・ドットソンの法則では、
最も力を発揮できるのは“適度な緊張”があるときだとされます。
背水の陣は行きすぎた例ですが、
私たちは「少しだけ背水」――
逃げ道をほんの少しふさいで、やる気を引き出すくらいがちょうどいいのです。
◆ まとめ
背水の陣は、単なる「逃げ場をなくす作戦」ではなく、
「追い込まれたとき人は力を発揮する」という人間心理を見抜いた戦略でした。
現代に生かすなら:
- 締め切りや試験を設定して自分を追い込む
- 周囲に宣言して退路を少しふさぐ
- でも同時に、勝てる小さな工夫や準備も忘れない
これが「適度な背水の陣」の使い方です。
今回の話、何か少しでも参考になることがあれば幸いです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
(完)