怒りを自分の味方にする、という話~名古屋心療内科コラム








「許せない」の正体はどこから来るのか
今回のテーマは「許せない」という感情です。
人間関係やSNSでの炎上など、私たちは日常的に「怒り」や「許せなさ」を感じることがあります。
しかし、心理学の研究では興味深い事実が示されています。
「許せる人」と「許せない人」の違いは、相手の行動ではなく、実はその人自身の性格傾向に大きく関係しているというのです。
フランスで行われた800人規模の調査では、性格的に安定している人ほど「許せる」と答え、
逆に問題を抱えやすい性格の人ほど「許せない」と答える傾向が見られました。
つまり、「許せない」という気持ちは必ずしも相手の行動そのものではなく、
自分の心の状態や考え方の影響を大きく受けているのです。
炎上の構造 ― 「大多数」は静かでいる
SNSの炎上を例に考えてみましょう。
大勢から批判されているように感じても、実際に書き込みをしているのはごく一部。
研究によれば、ネットユーザー全体のうち「炎上に積極的に参加する人」は 0.5%以下 しかいないそうです。
しかも、掲示板などでは同じ数人が繰り返し書き込んでいる場合が多いのです。
つまり「世界中から嫌われている」と思うのは錯覚で、現実には「ほんの一部の声が大きく見えている」だけなのです。
「憎しみ」に心を占領させない
ここで大事なのは、憎しみや怒りを「燃料」にしてしまうと、相手が自分の心の中に住み続けることになる、ということです。
どんなに仕返しや攻撃をしても、怒りは完全には消えません。
むしろ、そのたびに相手の存在を意識し続けることになります。
これは心理学的にも「反芻思考(同じことを繰り返し考えてしまうこと)」として知られ、ストレスや抑うつの原因にもなります。
建設的な「復讐」の方法
では、怒りを抱えたときにどうすればよいのでしょうか。
「相手を見返すように、自分の成長にエネルギーを使う」ことをおススメします。
例えば――
- 「あの人より良い成果を出そう」
- 「見返すために勉強や仕事を頑張ろう」
こうして行動に変えることができれば、怒りは単なる破壊的な感情ではなく、自己成長のためのエネルギーに変わります。
これこそが心理学的に最も健康的で効果的な「復讐」といえるのです。
まとめ ― 怒りを人生の材料に変える
- 「許せない気持ち」は相手ではなく、自分の心の持ち方の影響が大きい
- 炎上しても実際に関わっているのはごく少数
- 憎しみに心を支配されると、相手が心の中に住み続けてしまう
- 怒りを「成長の燃料」に変えることが、最高の復讐になる
怒りをゼロにすることはできません。
しかし、そのエネルギーを「相手を責め続けること」に使うのではなく、
「自分をより良くすること」に使うと、人生は確実に前に進みます。
つまり―― 怒りを行動の原動力に変えることが、心を守る最善の方法 なのです。
今回の話、何か少しでも参考になることがあれば幸いです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
(完)