発達障害のある子どもを可愛いと思えないとき|育児のしんどさと不安を軽くするヒント

発達障害のある子どもを可愛いと思えないとき
育児のしんどさと不安を軽くするヒント
【医師が解説】

発達障害傾向であったりグレーゾーンのお子さんを育てる中で、
「本当は可愛いはずなのに、そう思えない瞬間がある」「育児がつらくて自分を責めてしまう」──。
そんな親御さんの心の負担を少しでも軽くするために、気持ちの整理の仕方と頼れる支援先についてお話しします。

困りごと→対応プロセス
要点
  • 「可愛いと思えない」という気持ちは、愛情不足ではなく強い責任感や疲れのサインであることが多い
  • 「受け入れられない自分」を責めすぎず、まずはその気持ちを認めることが回復の第一歩
  • 同じ立場の保護者とつながることで、「自分だけじゃない」と感じられ、孤立感が和らぐ
  • 療育や発達支援センター・医療機関など、相談できる場所を増やすほど将来への不安は軽くなりやすい
  • 一人で抱え込まず、行政・専門機関・カウンセリングを利用することも大切な「親のケア」です
こんにちは、ゆうメンタルクリニック医師の森しほです。

発達障害のあるお子さんや、そのグレーゾーンのお子さんを育てている保護者の方から、
「発達障害だと分かるまで、正直、我が子を可愛いと思えない時がありました
というお話をうかがうことがあります。

これは、親としての愛情が足りないからでは決してありません。
むしろ、「ちゃんと育てなきゃ」「良い親でいなきゃ」という強い責任感やプレッシャーがあるからこそ、
育児がつらくなり、自分を追い詰めてしまうことが多いのです。
真面目で、一人で抱え込みがちな方ほど、この状態になりやすいと言えます。

診断結果からお子さんに「発達障害があります」「特性があります」と伝えられたとき、
すぐに前向きに受け入れられる方ばかりではありません。

  • 「障害だなんて受け入れられない」
  • 「こんなふうに思ってしまう自分は親失格だ」


  • と感じて、自分を強く責めてしまう親御さんも多くいらっしゃいます。
    ですが、「受け入れられない」という気持ちが出てくるのは、とても自然な心の反応です。
    その感情を無理に押し込めるのではなく、
    「それだけ自分は頑張ってきたんだな」と、少しずつご自身を労ってあげてほしいなと思います。

    また、発達障害児・グレーゾーンのお子さんの育児には、
    同じ経験をした人にしか分かりにくい苦しみがたくさんあります。
    家族や友人に話しても、

    「そんなのどの子も同じだよ」
    「親がもっとしっかりしないと」

    などの言葉で、かえって傷ついてしまうこともあるでしょう。

    そんなときに頼りになるのが、療育園・発達支援センター・親の会など、「同じ立場の人たちが集まる場です。
    同じように発達障害児を育てている保護者と出会うと、

    「悩んでいるのは自分だけじゃなかった」
    「こんな工夫の仕方があるんだ」

    と感じられて、心理的な負担がぐっと軽くなることがあります。
    「分かってもらえる人が一人いるだけで、育児のしんどさは大きく変わる」ことも少なくありません。

    人はみな、ぼんやりとした将来にいちばん不安を感じやすい生き物です。
    「このまま大きくなったらどうなるんだろう」「学校や仕事は大丈夫だろうか」など、
    見えない未来を一人で想像していると、不安はどんどん膨らんでしまいます。

    だからこそ、

  • 行政の相談窓口

  • 発達支援センターや療育センター

  • 小児科や児童精神科、心療内科などの医療機関

  • といった専門機関の情報を集めながら、「一緒に考えてくれる人」を増やしていくことが大切です。

    「もう無理かもしれない」「不安で頭がいっぱいになってきた」と感じたときは、
    どうか一人で抱え込まず、まずはお住まいの地域の行政や療育センターに相談してみてくださいね。
    あなたの気持ちを受け止めながら、一緒に歩くサポーターは必ず見つかります。

    \ 簡単1分 /
    発達特性・グレーゾーンセルフチェック

    お子さんに「発達障害かも?」「グレーゾーンかも?」と感じるポイントについて、
    目安となる簡易チェックをご用意しました。
    当てはまる項目に「はい」か「いいえ」でお答えください。

    本チェックは、お子さんの発達特性やグレーゾーンの可能性について考えるための目安です。
    医師による診断を行うものではありません。
    気になることやご不安な点があれば、お近くのゆうメンタルクリニックや専門医療機関・行政窓口へお気軽にご相談ください。

    1. ことばの遅れや会話のかみ合いに、年齢よりも気になる点があると感じる
    2. 集団生活(保育園・幼稚園・学校など)で、友だちとのトラブルや「浮いてしまう」様子が目立つ
    3. 音・光・におい・衣服のタグなど、感覚への強いこだわりや苦手さがあり、生活に影響している
    4. 予定の変更や思い通りにならない場面で、かんしゃくやパニックが強く出て親子ともに疲れやすい
    5. 「育てにくさ」を長く感じており、親である自分も寝つきの悪さ・落ち込み・イライラなどが続いている
    当院では、医師による診察だけでなく、心理士によるカウンセリングも行っています。
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    この記事の著者

    森 しほ

    ゆうメンタルクリニック・ゆうスキンクリニックにて勤務。
    産業医として一般企業のケアも行っている。

    ◆専門分野: 精神医療 / 皮膚科
    ◆資格:日本抗加齢医学会専門医 / 産業医 / 公認心理師
    ◆所属学会:日本皮膚科学会 / 日本抗加齢医学会
    ◆著書:『発達障害ママの子育てハック(監修)』飛鳥新社